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真夜中に...想い出ばなしと…だらりんちょ

#102 ドライフラワー

ドライフラワー

 

 

 

ベティが悪戯をするの。

まるであなたのようだわ

 

 

 

ホワイト・クリスマスじゃなかったけれど、この街にもクリスマスはやってきて

あなたは私に花束をくれたのよ。

 

待ち合わせの街

後ろ手に何か隠しているのは気付いていたけれど

 

真っ直ぐに私を見つめるあなたの澄んだ瞳

これ…ってぎこちなく差し出した綺麗な花束

 

ねぇ、嬉しかったわ

こんな風に花束をもらうこと初めてだったのよ。

 

ねぇ、想像しちゃったのよ

あなたがお店で花束を注文する姿…きっと今よりぎこちなかったんでしょうね

 

私が少しだけ、笑っちゃったのは

多分、きっと、あなたのせいよ

 

つられてはにかむその笑顔、そのエクボ私のものだよ。

ずっと、そう思っていたわ

 

 

きみの持つ綺麗な花もやがては枯れゆく運命だと知っていた

それでもボクは贈られずにはいられなかったんだ

 

 

 

ねぇ、花束は私のお気に入りの薔薇の花がついた白い花瓶に生けたのよ。

今、文字通り花盛り

 

どんな時でも愛でることが出来る様に机の上に飾ったわ

ガーベラを引き立てるかすみ草ですら美しいの

 

ベティ…お花が気になるのかな?

 

私が少しだけ、笑っちゃったのは

花たちに悪戯をする…その姿があなたに思えちゃったからね

 

 

キミが両手でマグカップを持ちながら花たちを愛でる姿が容易に目に浮かぶよ

会えない時間はこの花たちがボクらを繋いでいたんだね

 

 

 

少しでも長く飾っていたいから少し離れた場所に置いたの

それでも少し元気がなくなってきたわ

 

きっとこのまま枯れていくのね

思い出を切り取って胸にしまい込むように

この花たちもそのままでいられたらいいのに

 

ねぇ、きっとあなたはもう私の事なんて嫌いでしょ

こんなあやふやなキモチのまま…あなたに甘えるだけ甘えてた

 

ねぇ、あなたには晴れた空の下にいて欲しいの

こんな私と一緒に居続けたらずっと霧の中にいる事になるのよ

 

 

悲しいキモチなのは…確かにそうだけど

好きだというキモチ…それに偽りはないのさ

 

だけど…終わりにしなければならないなら…

 

枯れ落ちた花の中から種が落ちて

そしてまた花が咲くように

命の循環と同じように

 

次の未来でもまた私たちが出会い愛しあえるといいな

 

 

 

さようなら

 

たぶん私、あなたを愛していたのよ

あなたは私の寂しい夜を温めてくれたの

 

さようなら

 

たぶん私、あなたを愛していたのよ

あなたは私の光だったの

漆黒の夜にポツンと光輝く星だったの

 

 

私、このドライフラワーが目に写る度

あの時、あなたの言葉を信じた時の気持ちをもう一度感じて

フワフワと暖かい何かに包み込まれたような感覚になるの

 

不思議でしょ

 

あなたからもらった愛が今、ドライフラワーになって私の部屋で咲いているわ

 

 

もう、その笑顔を見せないで

私を包み込まないで

 

私は…あなたなしで生きていくと決めたんだから