『ラジオとボクの片想い』
中学3年生のクリスマス・イブ
その日、ボクは朝から落ち着きがなかった
イベントを意識し出した15歳の冬
中学1年生の頃から片想いのヒロミに告白をしようと一大決心をしたのだった
なけなしの小遣いでプレゼントを手にしながらボクは頭の中で何度も告白をシュミレーション
中学3年生のクリスマス・イブ
太陽が隠れた頃、ボクは彼女の家へ向かって歩き出した
電話番号が書いてあるメモを握りしめていた
彼女の家から最も近い公衆電話からダイヤルを回したんだ
ー あの…ヒロミさんいますか?
ー 今日は友達と遊びに行ってくると出掛けましたよ
彼女は家にいなかった
持て余したプレゼント
道路の端に積もっていた雪の中に埋めて家路についたよ
プレゼントもボクの想いも
雪と一緒に溶けて無くなってしまえばいいって思ったんだ
誰も帰ってこない暗い家に独り
電話のベルが鳴る度に心を震わせては違う声がすり抜けて行く
真夜中のラジオからは悲しい恋の話と悲しい恋の歌が流れる
こんなにも怨めしいクリスマスイブになるなんて...シュミレーションしていなかった
1988年 ラジオから浜田省吾の"片想い"が流れる悲しい出来事。