『…うそ?』
小学5年生が始まって半年を過ぎた頃。
それはとても衝撃的な出会いだったんだ。
ボクは放送委員会に所属していた。
委員は当番制で給食の時間に放送を担当する。
その日、当番放送が終わって教室へ帰る時の事。
隣のクラスの壁に数枚の絵が貼り出されているのを見つけたボクは何となく見ていたんだ。
あ、光春の絵だ...相変わらず上手だな
あ、こっちは道彦のだな...
道彦の絵の隣の作品...凄く上手な絵だな...誰が書いたんだろう?
うん?名前が...読めない...
ー どうしたの?
え?誰?見知らぬ女の子が声をかけてきたんだ。
ー あ、この絵上手だなぁって思ったんだ...でも名前が読めないんだ。
ー あぁ、この子は”むつの”って読むんだよ
ボクは無言で大きく頷いただけ
ー なんか、変な名前だと思わない?
ー いや、全然変じゃないよ。良い名前だと思うよ。
すると女の子は笑顔でボクを見つめて一言言ったんだ
ー ありがとう。
その時、遠くの方から女の子の集団が呼んでいた
ー むつのーー!外で遊ぼうよ
ー うん、今行く!
ボクの隣にいた女の子はボクにニッコリ微笑んで走り去ってしまった
あまりにも突然の出来事
あ?え?お?...うそ??
1984年 秋。ボクはその女の子に恋をしてしまいました。