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真夜中に...想い出ばなしと…だらりんちょ

#064 オリジナル

『オリジナル』

 

 

ーコピーもいいけど...いつかオリジナルを作りたいよね

 シホがスタジオでポツリと呟く...いやマイクを通してだからポツリじゃないか(笑)

 

ーじゃぁ、曲はナオヤに作ってもらうか!俺はセンス無いからなぁ

 と、ナオヤに無茶ブリを仕掛ける

 

ーじゃぁよ、詩はタカシ、お前が書けよ

 と、返り討ちにあう

 

 

バンドの練習が終わると俺たちは必ずミーティングと称していつものワールド・カフェか階段マックに行っていたんだ。

ある日の練習終りに俺は意を決してみんなに話かけた

 

 

ーあのさ、前に話した”詩”なんだけど、一応書いてみた。

 ーえ?書いたの?見せてくれる?

 

俺は少しルーズに折り曲がったレポート用紙数枚をシホの前に置いた。

シホは一番上の紙を自分用に、他のレポート用紙を1枚ずつみんなに渡した。

さっきまでワイワイとしてたけどみんな急に真剣な表情で黙り込んで読み出したんだ。

 

ーあ、短いのもあってね...ほ、ほら、そこから何か広がればいいかな?って...あとね、ジャンルも色々と考えてみたんだけど...

 自分の作品を読まれる事に慣れてなかったから恥ずかしかったのもあって、俺は一人で喋っていたよ。

 

ーこれ、いいね。

 シホが感想を話し出す。

 

ーおう、これもいいじゃねーか...ロックだな

 ナオヤもニヤニヤ笑いながら話し出す

 

ーでもまぁ、お前がこういうの書けるとはな。

 ーまぁ、無い知恵を絞り出して書いてみたんだよ。

 

ーこれは...ちょっとバンドの色に合わないかなぁ...悪くはないけど...

 シホが2つ目を読んでの感想を話し出す。

 

ーなんだろ...多分、バラードにすれば良いかもしれないよね?どう思う?

 そう言ってそのレポート用紙をタカに渡した。

 

ー読みまーーす!

 

そう言って、真剣に読み進める。

彼女の表情が少しだけ曇って行く。

”あっ..."って思ったけど作品は作品だからと何の反応もしないようにしてた。

 

 

ーね、なんか...ちょっと違うよね?もっと攻撃的な感じでもよくない?

 シホが彼女に同意を求める感じで話しかける

 

ーえ?あ...うん...そうかもしれないけど...

 ーたとえばさ、ここを英語の歌詞にしてみるのもアリじゃない?

ーじゃぁ、ここの部分はつながりがよくわからなくなるから...

 

作品が一人歩きを始めている気がしてきたよ。

なんだろう...否定されてる訳じゃないのになんか、ちょっとおいて行かれている気がしちゃってね

 

ーじゃぁさ、誰か手直ししてみてよ

 別に不貞腐れてた訳じゃないけど...言い方が良くなかったかな...何か喧嘩腰に取られちゃったかも

 

ーじゃぁ、私が少し直してもいい?

 少し困った顔でタカが言い出した。

 

ーいいけど、どれ?

 ーうん、じゃぁ、これとこれ...私も早目に考えてみるからね。

 

彼女は2枚ほど選んでカバンにしまいこんだ。

 

 

 

次の日の夜に電話のベルが鳴った。

 

ーね、昨日の詩だけど...

 ーあ、うん、もう直したの?

 

ーううん...でもあれってさ...私たちの事でしょ?

 ーい、お、いや、違うよ...

 

ー嘘だよ...ねぇ、私は知らないうちにあなたを傷つけてたの?ヒドい事したの?

 ーううん、そうじゃないよ。確かに俺たちの事も少し影響してるけど、それ全てが本心じゃないよ

 

ーいや、でも...うん、わかった。

 何かを飲み込んだかな?そして彼女は続けざまに話し出す。

 

ーねぇ、私ね、こういう文体嫌いじゃないからもう少し読みたいの。書ける?

 ーえ?わかった。書いてみる。

 

ーあのね、みんなには絶対に見せないから...この意味わかるでしょ?

 ーあ、あぁ...うん、わかった。

 

 

 

夜空のAngel

 

この夜空を見上げてキミを想う

どうしたらキミを幸せに出来るのかな?

 

その笑顔を守る事、ボクには無理なのかな?

この想いが伝わればいいんだけど...

 

”好き”とか”愛してる”とか言えないまま時間だけが流れて行く

勇気がないボクは一体何をしているんだろう?

 

星たちが瞬いている

ボクは今夜も夜空を見上げてキミを想ったまま眠るんだ

 

 

広い宇宙の中で出逢った事は本当に奇跡だと言えるのに...

どうしたらボクは幸せになるのかな?

 

ボクはその優しさに甘えてばかり

キミはこの優しさに甘えてばかり

 

こんなワガママな二人だから

いつかきっと傷つけ合ってしまうんじゃないかな?

 

不安になってしまうよ。

どうしようもない想いを届けたいだけなのに

 

 

ボクはきっとこの部屋で待つしかないんだと思うんだ

星が瞬き、月の光がボクの部屋へと誘うのに

 

翼が傷ついてしまったのでしょうか?

道に迷ったのでしょうか?

Angelは今夜もボクの所へ舞い降りてきてはくれません