『メンボ』
ーなぁナオヤ、そろそろマジでバンドメンバー募集しないか?
ーうん...そうだよなぁ...楽器屋さんの掲示板使うか?
ーああ、いいね。じゃぁ、俺募集の紙作るよ。
高校生活が始まって2年目の春。
ボクとナオヤは昼メシを食べながらこんな話をしていた。
バンドをやろう!と言い出したのは去年の事。
ボクとナオヤとシホはメンバーとして決まっていたけど...まだ足りない。
構成的に言えばベースとキーボードが欲しかった。
こんな時一番効果あったのが楽器屋さんに置いてある掲示板。
通称、メンボ。
今ではあまり考えられないだろうけど、ノートを破った紙に詳しい情報を書込んで連絡先を大々的に公開する。
”バンドメンバー募集!”
→キーボード、ベース
→メンバーは全員高校2年生です!
→男女問わず!連絡を待つ!
みたいなね。
連絡先はボクの自宅だった。
馴染みの楽器屋さんにメンボを持参して...後は連絡が来るのをひたすら待つだけ。
数日経って、本当に連絡くるのかな?ちょっと疑い始めた頃に電話のベルが鳴った。
ー電話よ。
母が取り次ぐ
ーもしもし?
ーあ、あの...メンボ見たんですけど...
ドコか幼さを感じる...だけど透明感のある声だった。
ーうん?...あ!あぁ...ありがとう。
ーいいえ、あの、キーボードってまだ募集してますか?
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
ーあ、うん。してるよ。
ーあ...その、やってみたいなぁ...と。
ーそっか...じゃぁ、一度メンバーみんなと逢ってくれるかな?
ーはい。わかりました。
ーじゃ、明後日の夕方...6時頃に駅前で大丈夫かな?
ーはい。私、M学園の制服着ています。
ーあ、わかった。俺らはT高校の制服着てるから。
2日後、俺とナオヤは駅前にいた。
男だけだと俺らも相手も困るかなぁ?と言う事でシホにも集合をかけておいた。
そして夕方の6時
俺は部活を終えてギリギリに到着。
とりあえずナオヤを探して...あ、いた...って
ーえ?ナオヤ、お前なんで私服なんだよ。
ーあ?俺部活やってないから一旦帰ったに決まってんじゃん。
そう、彼は俗に言う”帰宅部”
ーおう、そうか、そうか...ってかよ、お前顔赤くないか?
ーあ?おう、これな。
少しニヤけた顔してボクの前に差し出したのは缶チューハイ!
お前も飲むなら一口やるぞ!ってなドヤ顔
ーおま...飲んでるってか?捕まったらどうするんだ?
ー逃げる!逃げ切ってみせる!
そこにシホがやってきた。
ーお疲れ~何盛り上がってるの?あ...ナオヤ君...それってお酒?...大丈夫?いやぁ、ロックだわ♪
ーいや、シホ、全然ロックじゃねーから!氷は入ってねーから!炭酸割だから!
ーそのロックじゃねーだろぉよ~ まぁ、俺は逃げるぞ!捕まるヘマしねーんだ!
ーいやぁ、ナオヤ君はロックよねーー
ーあのぉ...
ボクの背中越しに響く聞き覚えのある声。
振り返るとM学園の制服にポニーテールの女の子が立っていた。
ーいやぁ、可愛いーーっ子...
シホの興味はナオヤから彼女へいとも簡単に移っていた。
ーあ、メンボの電話の人?
ーあ、はい。タカコと言います。
ー私、シホって言います。vocalだよ。よろしくね
ーあ、俺はDr.のタカシです。一文字違いだね。ヨロシク!
ー俺はナオヤって言うんだ。Gt.担当で訛っているけど千葉県育ち!
このノリに付いてこれないのか...彼女は軽く会釈をするだけで精一杯の様子だった。
ーてか、ナオヤ!お前本当に大丈夫なのかよ?
ー大丈夫に決まってんじゃんかよ!バイクで来たんだぞ!
ーはぁぁぁぁ?それで缶チューハイは完全にアウトだろ!
ーシホがロックだって言うんだから大丈夫なの!
ワイワイ,,,ガヤガヤ...
もう、どうでも良い事で盛り上がっていた。
困惑する彼女
何となく目つきがかわるシホ
ーねぇ、場所変えるよ!下のワールドカフェ行くよ。
ーは~い
ー仰せの通りにってか(笑)
シホのリードでボク等は移動した。
そしてこれからのバンドについて話し合った。
今思えば、それは夢物語を語っていたのかもしれないけど、出来るだけ早めにスタジオに入ってみようぜ!こうしてその日は解散となった。
ーちょっと!ナオヤ君大丈夫?
ーおう!大丈夫だ!
ー大丈夫じゃないねぇ...バスで帰りなって...私、バス停まで連れて行くね
ーおう!大丈夫だ!
ダメだこりゃ
ーあ、楽譜コピーして早めに渡すのに電話するから
ーあ、はいわかりました。
ー電車?
ーはい。電車です。
ーじゃぁ、改札まで一緒に行こうか
ーはい。
最後まで緊張していた彼女。
ポニーテールが似合うカワイイ女の子。
この時、ボクは人生で初めての一目惚れをしていた事はまだ誰も知らない
これがボクと彼女のファースト・コンタクト