back stage pass

真夜中に...想い出ばなしと…だらりんちょ

#055メンボ

『メンボ』

 

 

ーなぁナオヤ、そろそろマジでバンドメンバー募集しないか?

  ーうん...そうだよなぁ...楽器屋さんの掲示板使うか?

 

ーああ、いいね。じゃぁ、俺募集の紙作るよ。

 

 

高校生活が始まって2年目の春。

ボクとナオヤは昼メシを食べながらこんな話をしていた。

 

バンドをやろう!と言い出したのは去年の事。

ボクとナオヤとシホはメンバーとして決まっていたけど...まだ足りない。

構成的に言えばベースとキーボードが欲しかった。

 

こんな時一番効果あったのが楽器屋さんに置いてある掲示板。

 

通称、メンボ。

 

今ではあまり考えられないだろうけど、ノートを破った紙に詳しい情報を書込んで連絡先を大々的に公開する。

 

”バンドメンバー募集!”

 →キーボード、ベース

 →メンバーは全員高校2年生です!

 →SHOW-YAを中心にしたコピーバンド

 →男女問わず!連絡を待つ!

 

みたいなね。

 

連絡先はボクの自宅だった。

馴染みの楽器屋さんにメンボを持参して...後は連絡が来るのをひたすら待つだけ。

数日経って、本当に連絡くるのかな?ちょっと疑い始めた頃に電話のベルが鳴った。

 

 

 ー電話よ。

 

   母が取り次ぐ

 

 

ーもしもし?

 ーあ、あの...メンボ見たんですけど...

 

ドコか幼さを感じる...だけど透明感のある声だった。

 

ーうん?...あ!あぁ...ありがとう。

 ーいいえ、あの、キーボードってまだ募集してますか?

 

 

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! 

 

 

ーあ、うん。してるよ。

 ーあ...その、やってみたいなぁ...と。

 

ーそっか...じゃぁ、一度メンバーみんなと逢ってくれるかな?

 ーはい。わかりました。

 

ーじゃ、明後日の夕方...6時頃に駅前で大丈夫かな?

 ーはい。私、M学園の制服着ています。

 

ーあ、わかった。俺らはT高校の制服着てるから。

 

 

2日後、俺とナオヤは駅前にいた。

男だけだと俺らも相手も困るかなぁ?と言う事でシホにも集合をかけておいた。

 

そして夕方の6時

俺は部活を終えてギリギリに到着。

とりあえずナオヤを探して...あ、いた...って

 

 

ーえ?ナオヤ、お前なんで私服なんだよ。

 ーあ?俺部活やってないから一旦帰ったに決まってんじゃん。

 

 

そう、彼は俗に言う”帰宅部

 

 

ーおう、そうか、そうか...ってかよ、お前顔赤くないか?

 ーあ?おう、これな。

 

 

少しニヤけた顔してボクの前に差し出したのは缶チューハイ

お前も飲むなら一口やるぞ!ってなドヤ顔

 

 

ーおま...飲んでるってか?捕まったらどうするんだ?

 ー逃げる!逃げ切ってみせる!

 

そこにシホがやってきた。

 

  ーお疲れ~何盛り上がってるの?あ...ナオヤ君...それってお酒?...大丈夫?いやぁ、ロックだわ♪

 

ーいや、シホ、全然ロックじゃねーから!氷は入ってねーから!炭酸割だから!

 ーそのロックじゃねーだろぉよ~ まぁ、俺は逃げるぞ!捕まるヘマしねーんだ!

 

  ーいやぁ、ナオヤ君はロックよねーー

 

 

 

 ーあのぉ...

 

 

ボクの背中越しに響く聞き覚えのある声。

振り返るとM学園の制服にポニーテールの女の子が立っていた。

 

 

ーいやぁ、可愛いーーっ子...

 

シホの興味はナオヤから彼女へいとも簡単に移っていた。

 

 

ーあ、メンボの電話の人?

 ーあ、はい。タカコと言います。

 

  ー私、シホって言います。vocalだよ。よろしくね

ーあ、俺はDr.のタカシです。一文字違いだね。ヨロシク!

 ー俺はナオヤって言うんだ。Gt.担当で訛っているけど千葉県育ち!

 

 

このノリに付いてこれないのか...彼女は軽く会釈をするだけで精一杯の様子だった。

 

ーてか、ナオヤ!お前本当に大丈夫なのかよ?

 ー大丈夫に決まってんじゃんかよ!バイクで来たんだぞ!

 

ーはぁぁぁぁ?それで缶チューハイは完全にアウトだろ!

 ーシホがロックだって言うんだから大丈夫なの!

 

ワイワイ,,,ガヤガヤ...

もう、どうでも良い事で盛り上がっていた。

 

困惑する彼女

何となく目つきがかわるシホ

 

  ーねぇ、場所変えるよ!下のワールドカフェ行くよ。

 

ーは~い

 ー仰せの通りにってか(笑)

 

シホのリードでボク等は移動した。

 

そしてこれからのバンドについて話し合った。

今思えば、それは夢物語を語っていたのかもしれないけど、出来るだけ早めにスタジオに入ってみようぜ!こうしてその日は解散となった。

 

 

ーちょっと!ナオヤ君大丈夫?

 ーおう!大丈夫だ!

 

ー大丈夫じゃないねぇ...バスで帰りなって...私、バス停まで連れて行くね

 ーおう!大丈夫だ!

 

ダメだこりゃ

 

ーあ、楽譜コピーして早めに渡すのに電話するから

 ーあ、はいわかりました。

 

ー電車?

 ーはい。電車です。

 

ーじゃぁ、改札まで一緒に行こうか

 ーはい。

 

最後まで緊張していた彼女。

 

ポニーテールが似合うカワイイ女の子。

この時、ボクは人生で初めての一目惚れをしていた事はまだ誰も知らない

 

 

これがボクと彼女のファースト・コンタクト