『Lost Summer -キミを失った夏-』
暑い夏の日。
空は曇っていた。
引っ越し直前だった夏休み。
俺は部活に汗を流していた。
3時過ぎだろうか?先生方が慌て出したのを今も覚えている。
え?
信じられないニュースを耳にした
自分の耳を疑ったよ
あいつが海に消えた
そんな...あいつは運動神経抜群だし
そんな...あいつに限ってそんな事...
昨日だって一緒にバンドやろうぜって言ってたじゃないか
頭の中がグルグルと回り出す
あいつの笑顔が蘇る
いつも悪ぶっていたくせに俺を認めてくれていた
俺がトラブった時、誰よりも先に助けてくれたじゃないか
眠れない夜が続く...
あいつが海に消えて76時間…
現実はあまりにも残酷だったよ
あいつの葬式には行かなかった
行けば絶対に泣いてしまうから
バーカ、何泣いてんでよって...あいつは言うに決まってる
バーカ、泣いてねーよって...あいつに言う自信が無かったから
あいつの葬式には行かなかった
死んだ事を絶対に認めたくないって思っていた
あいつが死んだ事に恐怖を覚えていた
だから、現実逃避したんだ
あいつは遠い外国へ行ったと想う事にしたんだ
そうすれば...残酷な想い出は時間が癒してくれる
そうすれば...残酷な現実の痛みは優しい時間が忘れさせてくれる
遠い国であいつは生きている
あの年、ボクらは夏を失ったにすぎないんだ
1989年 曇天模様の空の下、海の国へ召されたあいつの記憶よ永遠に。