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真夜中に...想い出ばなしと…だらりんちょ

#071 キミは知っている

『キミは知っている』

 

 

夏の忙しさも一段落してきた。

部活の合宿もイベント出演も何とかこなして

やっと夏休みらしい夏休みの午後のこと。

 

 

 ーもしもし?

  ーあ、私...今電話してても大丈夫?

 

 

 ーうん大丈夫だよ。周り騒がしいけど何かあったの?

  ーううん...用事らしい用事はないんだけど...今、病院なの

 

 

彼女は甲状腺の病気を抱えていた。

 

 

  ー検査だったんだ。

 ーそっか...大丈夫なの?

 

 

  ーうん...今薬待ちで一人きりだったから電話しちゃったの

 ーうん。話するの久しぶりだね...電話ありがとう。

 

 

素直に電話が嬉しかった。

声が聞きたいって思っていたけど、自分自身の忙しさ

それに...年上の彼氏の存在が気になってたから

 

 

  ーねぇ、もう少し話せる?

 ーえ?大丈夫だよ。どうした?

 

 

  ー100円入れるから、絶対に切らないでお話してくれる?

 ーうん。いいよ。

 

 

  ーなんかさぁ...病院に行くだけで落ち込んじゃって... 

 ーそうだよね...それが定期的に通うってなれば尚更だよな

 

 

  ーそれでね...この前の話だけど...............彼氏出来たっての...

 ーうん。知っているよ。ナオヤから聞いた。

 

ー私、あなたを傷つけるつもりはなかったの...それに...

 ーね、今が幸せならそれでいいんじゃない?

 

ー私、幸せじゃないよ...結局弄ばれただけで...また余計な傷つくっちゃった

 ーうん...そっか...じゃぁ、ココロの絆創膏必要なんだね。

 

ーうん...ゴメン...電話なんかしちゃって...

 ーううん、俺、電話もらって嬉しいよ....ね...あの...

 

ーえ?...うん?

 ーううん、さぁ、どうでもいい話をしよう。

 

 

ボクはキミの心に絆創膏をはってあげれるかな?

ボクはキミの心にどれだけ存在しているのかな?

 

心の隅に少しだけ引っ掛るものがあるけどね

心の大部分はキミの事を思い続けていたんだ

 

ボクは忘れることなんか出来なかったんだ

だから、この電話にどれだけ救われているのか

 

 

 

ボクたちは話を続けた。

どーでもいい話ばかり続けた。

 

それがキミの救いになるならば

ボクはドコまでもこの会話に付き合うよ。

 

 

 

ビーーッ

 

 

  ーあ、もう切れちゃう...

 

 

 

受話器越しに淋しいって気持ち伝わるよ。

だから、ボクはキミにリクエストしたんだ

 

 

 ーねぇ、10円入れてくれない?

 

 

  ーうん...入れたよ。

 ー俺、今から逢いたいから逢ってくれないかな?

 

 

  ーえ?でも...いいの?

 ー原チャリ飛ばせば15分くらいだし

 

 

  ーうん。じゃぁ、病院の入口で待ってる。あ、病院の場所わかる?

 ーわかるよ。じゃぁ行くから絶対待ってろよ。

 

 

 

ビーーッ

 

 

 

  ーあ、切れるかも...うん、わかった。まって........

 

 

 

 

 

キミは知っている

 

 

 何も言わないけれど

 いや、何も言えないけれど

 

 ボクは知っている

 ボクはキミに興味があるってこと

 

 興味?

 

 ううん、そんな感情じゃないや

 

 

 キミを想うだけで胸が苦しくなって

 ただ、ただキミを守りたいこの気持ち

 

 ボクはキミの刀であるように 

 ボクはキミの空であるように 

 ボクはキミの涙であるように 

 ボクはキミの無ではないようにと

 

 キミを想う感情が溢れ出す

 キミに恋をする感情が止めどなく溢れている

 

 

 キミはそれをきっと知っている

 キミはボクを必要としているのだろう?

 

 急いでキミの元へ行こう。

 淋しがらないで...待ち合わせまであと15分。