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真夜中に...想い出ばなしと…だらりんちょ

#137 パンチアウト

パンチアウト

 

 

高校三年生の生活が始まって1ヶ月ほど経った頃。

その日俺は朝早く電話で起された。

 

 

ーもしもし?オザキだけど!

 ー日曜の朝に珍しいね。何?

 

当然ながら、寝ている所を起されて俺は機嫌が悪かった。

そんな事は全く気にしない様子で話を続けるオザキ

 

 

ーあのさぁ、お前、今日、何か予定ある?

 ー今日?夕方からバイトだよ。

 

だからゆくっり寝るつもりだったんだ!

 

 

ーじゃぁ、今からボーリングに来てよ。男の頭数足りないんだよね。

 ーなんだよ。人数合わせかよ。

 

ーダメか?

 ーヒマだから別にいいよ。

 

ーじゃぁ、10時にステンド前で!

オザキも準備に忙しかったのか、それだけ言い残して電話を切った。

 

とりあえず、起き出して

サンデーモーニング見てたお袋に朝メシ作ってもらって

支度して、JRに乗って、待ち合わせ場所に着いたのが10時5分前

 

数分してオザキ登場。

いつも通りオッさんみたいな服装。

 

その後に女の子が二人いた。

 ー初めまして。チカコです。

 ーあ、初めまして。マミと言います。

 

ーあ、どーも。

 

ちょっと眠たかったからか、少し愛想悪い感じで素っ気ない返事をしちゃったかも。

 

そんな様子を見てたオザキが取りなすように

ーじゃぁ、どうしようか?予定通りボーリングでも行く?

 

 

ーうん!いいよ。あ、タカシ君は?いい?

マミが笑顔で俺に聞く

 

 

ーあぁ、別にいいよ。

マミの笑顔に素直になればいいんだけど、変なプライド?十代特有のテレが邪魔をしてた。

 

 

向かったのは俺のバイト先の隣のビルにあったボーリング場

この頃のボーリングは自分たちでスコア書込むのが当たり前だったな。

だから、受付で名前を登録する必要がなかった。

 

ーボール選んだらさ、チーム制でやらない?

オザキが仕切り出す。

 

 ー別にいいけど、どう分けるの?

ーう~ん...では、女の子で僕らのどっちかを選んでくれ。

 

 ーどうする?

チカコがマミに問いかける。

 

 ーどうしようか?

マミ、君がチカコにそう言いながら目線は俺に向けてた事...気が付いていたよ。

 

結局二人はジャンケンで選ぶ事にした。

勝負の行方はマミの勝ち。

 

 ーあ、じゃぁ...タカシ君...一緒に組んでもらっていいですか?

ーあ、うん、よろしく

 

 ーじゃ、オザキ...腐れ縁だけど組むよ。

ぶっきらぼうにチカコが言い放つ

 

並んで座る事に不思議と違和感を感じなかった。

ゲームが始まる。

 

マミは少し重たそうにしてぎこちなく投げる。

そしてボールはゆっくりとピンに向かって転がって行く

お願い!まるで教会の祭壇に向かって祈るようなポーズ

 

俺はそんな後を姿を微笑ましく見ていたよ。

 

 

殆ど勢いがないボールは曲がる事も無くセンターピンに当たる。

その結果、全てのピンが倒れてストライク!

 

やるじゃん!

自然とハイタッチをしたんだ。

 

試合はねまぁまぁのシーソーゲームだった。

10フレーム目は俺が投げる事になった。

スコアは逼迫している

 

1投目...ストライーーク!

 ーうぁ!タカシ君すごーい!

 

2投目...ストライーーク!

 ーうぁ!タカシ君もってるーーっ!

 

まぁ...完全なるマグレである。

 

運命の3投目...いけーーーっ!

 

ストライーーーーク!!

 

パンチアウト達成!

マミと俺は異常なテンションで盛り上がった。

今日、初めて会った二人とは思えない状態だったよ。

 

ゲームが終わって、みんなで昼メシを食べる事になった。

場所はいつものワールドカフェ(笑)

 

何となくソファ席の角に座った。

 

ーあ、隣に座ってもいい?

 マミが自然な感じで話しかけてきた。

 

ーもちろん、別に構わないよ。

 やっぱりドコか他人行儀なオレ

 

マミがまぁまぁ質問をしてくる

それに答えながら俺は飯を食べてた。

 

ーえ?バンドやってるの?部活もバイトもしてるのに?

 ーうん。まぁ、そうだね。

 

ー受験はしないの?

 ー本当は専門学校行きたいけど、親が許さないだろうから就職になるかな。

 

そんな会話をしてたと思う。

 

 

ーこの後どうする?

オザキが話し出す。

 

ーカラオケ?

チカコが返答する

 

ータカシ君は?

マミが質問する

 

ー今からだとバイトの時間まで中途半端だから3人で行ってきなよ

 

 

ーえーー3人で行くの?

チカコがオザキに向かって笑いながら話す

 

ーダメなのかよ!マミは?

 ーえ?う、うん...バイトなら仕方ないもんね...いいよ3人で行こう。

 

この後、俺が移動するまでの間、少しゆっくりしながら話をした。

 

ーじゃぁ、時間だから。楽しかったよ。また機会があったら

こうして、俺はバイト先へと向かった。

 

 

 

 

 

翌日、教室でオザキが俺の席に近寄ってきた。

 

ーあのさ、マミちゃんが電話して欲しいって頼まれたよ

 ーん?そ?じゃぁ、電話したらいいじゃん

 

ーイヤイヤ、俺じゃなくてお前からだよ。はい、電話番号

 ー何で俺?

 

 ーしらんよ!たぶんお前を気に入ったんじゃね?これ、電話番号な

ーあ?マジで?

 

見ればマミの字で”良かったら電話下さい”って短い文と自宅の電話番号が書かれていた。

とりあえず制服のズボンのポケットに折畳んでしまったんだ。