『待ち合わせはいつもの場所で』
その日、改札を出ると彼女はもう待っていた。
ーごめん、待たせたかな?
ーううん、大丈夫。ちょっとだけだよ。
ーえっと...ドコに行こうか?
ーねぇ、少しお茶しない?
彼女は歩き出してスグに言った。
ーいいよ。
駅から少し歩いた雑居ビル 狭いエレベーター
二人で何度か訪れているカフェはそんな所にある
ーいらっしゃいませ~ 空いてる席へどうぞ~
やる気があるのか無いのか…少々無気力で事務的な声の店員さんが二人を迎える
ーいらっしゃいませ~ 何にしますか?
ーじゃぁ…俺はアイスコーヒーで
ー私はアイスレモンティー下さい
ドリンクが来るまでの二人はたわいもない話をしている。
ーこの前の練習でさぁ...私、キーボードのソロ部分ちゃんと弾けてたかな?
ーう~ん…ちょっと怪しい場所あったけど大丈夫だったと思うよ。
ー音色をさぁ…変えた方がしっくりくるかなぁ?
ーじゃぁ、次のスタジオで試してみる?
ーお待たせしました~ ごゆっくりどうぞ
会話を中断させるかのように運ばれてきたアイスティー
ガムシロップを入れるとグラスの中の氷が”カラン”と音を響かせる。
彼女はストローでかき混ぜてその音を何度となく響かせる...何かを切り出したい様子。
何だろう?良くない話かな?
ボクは気付かない振りをする
ーねぇ...
ーうん?なに?
ーこれ、後で読んで欲しいの
ーさよならの手紙?
ー違うよ!そうじゃないよ...なんて言うか...この前書いて持ったヤツの...お返事というか...
ーそっか...わかった。ありがとう。
手紙の中身が気になって仕方がなかったけれど...
ボクはクールに装ってアイスコーヒーを飲み干した
部屋に戻るまでボクの鼓動がいつもより早かった事は誰も知らない