『五月雨』
ーねぇ… ナオヤくん東京から帰ってくるって本当?
ーうん。
ーなんで?
ーうん。
ー知らないの?言えないの?
ーアイツのプライドもあるから俺からは言わない方がいい。アイツから話すまで普通に接してあげて
ーうん。わかった。じゃぁ理由は聞かないけど、今度みんなで集まってうちでお帰り会しよう。
ー優しさは変わらないな
その日は朝から雨が降ったり止んだりしていた。
誰も何も確信をつかず、ただひたすらバカ話で盛り上がった
それが一番だとみんな知っている
きっとこの先、何年経ってもこうしているのが一番だと…みんな知っている
ーねぇ、せっかくだから記念に写真撮ろうよ!
タカが思いついたように話す
ーなんの記念だよ(笑)
ナオヤが笑いながら言う。
ーなんだっていいじゃん!外で撮ろう!
ナオコが率先して外に向かう
ー雨だし…何より夜だぜ?
重い腰を上げながら俺がみんなに問いかける
ーいいの!みんな行こう!
優しい笑顔の彼女が誘う5月の夜雨は優しい雨だった。