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真夜中に...想い出ばなしと…だらりんちょ

#236 きしむ音が聞こえる

『きしむ音が聞こえる』

 

 

 

 

夜に仕事の準備をしていたら社長からメールが来た。

 

 

3年前までこっちのチーフをしていたWさん。

定年で退職をしたが…そこは零細企業…人手が足らなくてツアーの下準備や事務所番などお手伝いをしていてくれた。

 

入院をした事は知っていた。

病名も知っていた。

退院した事は知っていた。

みんなで良かったねって言った。

検査で再入院した事も知っていた。

 

退院の日血を吐いたそうだ。

病気の名前は「肺癌」

 

抗がん剤の大量投与で薬はすでに効かず、肺は機能しておらず人工呼吸器で何とか生きている状態で、奥さんが話すにはもって今週いっぱい位だと社長のメールには書いてあった。

 

急な話で言葉をなくした。

 

俺がこの会社に入社した時から面倒を見てもらい、東京に戻ってからも俺の事を心配していつも電話でアドバイスをしてくれていた。ある意味、社長より頼りになってたしね。

 

たまんないよ…心も体もきしむよ。

 

親族も

恩人も

知人も

友達も

 

失った時の…失うと解った時のこの気持ち…

真綿で首を絞められるようなジリジリときしんでいくのを感じる。

 

仕事が忙しくて会いに行けない。

まぁ、会いに行った所で「何で来た!仕事しろ!」って怒るだろうけどね。

 

仕事が忙しい...理屈だよね

今、部屋の中は無音。

キーボードを打つ音だけが耳に入ってくるはずなのに…

 

きしむ音が聞こえる。

 

 

無力

 

 

今は仕事を一生懸命するしか無いのかな…

 

せめて彼に残された時間が少しでも穏やかであるように願うこと…

わずかな期待を願う事…

 

 

ダメだ

 

涙落ちてくる

 

 

 

それでも明日は来るんだよね。