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真夜中に...想い出ばなしと…だらりんちょ

#062 エクボさわらせて♪

『エクボさわらせて♪』

 

 

 ーねぇ、メガネはずしてみて

  ーえ?あぁ…いいけど?

 

 

6月の晴れた日曜日の午後。

ボクたちは今日も二人きりで逢っていた。

 

 

 ーへぇ…よく見るとまるい瞳で可愛いよね♪

  ーそういうセリフって男が言うんじゃないの?

 

 

 ーそんな事ないよ!

  ーそっか…あのさ…いや…いいや

 

 

 

言い出すべきか...言わずに堪えるか...

ぐっと堪えた所に彼女が話しかける

 

 

 ー何よ?言って?

 

 

ボクは意を決して、生唾を飲み込んで...

 

 

  ーうん…あのさ…電車の時間変えちゃったの?

 

 

え?何の話?と不思議顔の彼女

少しだけ間が空いたけど、ボクの質問の意味をスグに察したのだった

 

 

 ーえ?あ、うん…バスの時間には少し早いから次の電車にしたんだ

  ーそっか…なるほど…うん、わかった

 

 

 ーどうしてそんな事?

  ーいや、最近朝に見かける事な無くなったなぁって思ったからさ

 

 

 ーえ?会いたかったの?

  ーいや、違うよ!ただ、いつも見かけてたからどうしたのか気になっただけだよ

 

 

 ーふ~~ん…

  ー何で笑う?俺、おかしな事言ったか?

 

 

彼女はニヤつきながら...してやったりと言わんばかりに

 

 

 ーねぇ、私の事気になるの?

  ーいや、そんなこ...

 

 

ボクはビシッと図星な事を言われると隠し通せない性格。

いつの間にかそれを見抜いていた彼女はいつもの意地悪のお返しに

 

 

 ーちょっと!笑顔になってるよ

  ーいや、なってねーし!

 

 

 ーううん、笑顔になると”エクボ”できるの知っているんだよ!ちょっとそのエクボ触らせてよ!

  ーやめろって!

 

 

こんな戯れつきが幸せだったんだ。

 

 

 

 

 

木もれ日の中

 

 

 まるい瞳

 

 笑うとくぼむ

 ほっぺたの真ん中

 

 そう えくぼというのかい

 

 ふうん さわらせてよ

 

 恥ずかしそうに嫌がるとき

 

 

 イヤイヤするとき

 首をすぼめるんだ

 それは何ともかわいいしぐさ

 

 首もさわらせてよ

 

 

 逃げていく

 

 

 えくぼも首もダメだって

 

 ケチだなぁ

 

 本当に

 

 あんまりケチにしていると

 ぜんぶもっていくよ

 

 

 

 

次の日からキミは何も言わず乗る電車を元に戻した

朝の地下道にまた一瞬の幸せをボクにもたらしてくれた。