『オレンジ -香-』
助手席のシートを倒してふっと眠った彼。
疲れちゃったね。
この半年
私に逢うため
お金をためて
お仕事頑張ってくれた彼。
ありがとう。
帰ったらまたカメラの向こう側になる。
彼の乗る助手席の向こうは沈みゆくオレンジ色の太陽。
淋しくないよ。
悲しくないよ。
言葉にしない自分への言い聞かせ。
寝てるはずなのに
彼は私の手を無意識に握ってくる。
それが
可笑しくて
私の視界が滲んでくる。
胸の中に重たい石が乗っかってるみたい。
最後の夜
彼は私にたくさんの足跡をつけた。